大判例

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高松高等裁判所 昭和40年(う)99号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕所論は、要するに原判示認定の被告人の本件所為は、刑法第二六一条所定の物を損壊した場合には該当しないものというべきであつて、何等罪とならないものであるのにかかわらず、原判決が同法条を適用処断しているのは、法令の解釈適用を誤つたものであるというのである。

しかし刑法第二八一条のいわゆる物の損壊とは、物質的、有形的に物の形態を変更し、もしくは破損するだけではなく、およそ物を本来の目的に従つて使用することができない状態に至らしめる場合をもいうものと解されるところ、被告人の本件所為のうち、前示認定の如く被告人が房内に取りつけてあつた棚板をもぎとり、右棚板で房扉を乱打して、同棚板の一部を破損した行為は、右棚板の本来の効用を失わしめたものと認めるのが相当であるから、右所為が前示損壊に該当しないとする主張は採用できない。しかし本件所為のうち、被告人が右棚板で房扉を乱打して、同房扉の数ケ所を損傷し、もつてこれを損壊したとの点について考察するに、原審で取調べた司法警察員作成の昭和三九年七月一〇日付実況見分調書、原審の検証調書及び原審証人田所渡の証言を綜合すると、右房扉は檜の角材で骨組みをつくつて、厚い檜板を張りつけ、鉄製の蝶番で柱に取りつけられている頑丈なもので、杉材である右棚板で被告人が乱打したことによつて生じた数ケ所の損傷というのは、右房扉の檜板の表面に板の角があたつて生じたと思われる軽微な傷痕が見受けられるという程度に過ぎないもので、何等修理の必要も感じられないまま従前と変りなく使用されていることが認められるのであつて、右の程度の損傷は未だ本来の目的に従つて使用することができない程度に至らしめたものとはいえず、前示損壊の概念には該当しないものと解するのが相当である。従つて被告人の右の所為を刑法第二六一条所定の損壊に該当するものと判定して、同法条を適用処断した原判決は、所論の如く法令の解釈、適用を誤つたもので、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。従つて論旨はこの点において理由があるから原判決は破棄を免がれない。(横江文幹 東民夫 梨岡輝彦)

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